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サンゴの分類
彫刻や宝飾用に利用されるサンゴは、生物学的には腔腸動物、花虫綱、八放サンゴ亜綱、ヤギ目に属しています。
つまり、ヒドラ、クラゲ、イソギンチャクなどと同じように、水中で触手を動かし、餌となる生物(プランクトンや藻類)を摂りこみ、成長している動物の仲間です。
腔腸動物では、クラゲ型とポリプ型という二つの段階を経過するものがあることが知られていますが、原則として、クラゲ型は水中での浮遊生活、ポリプ型では水底での定座生活を送っています。ポリプ型だけでクラゲを出さない座着性のものを花虫綱(はなむしこう)といいます。
少しイメージは違いますが、例えばタコやイカを想像してみて下さい。足のような触手が8本、または10本です。
珊瑚礁を形成するイシサンゴ目の造礁サンゴのポリプ(触手)は6本。それに対して宝飾用サンゴのポリプ(触手)は8本になっています。化石サンゴの中には4本のものもあります。次第に進化してきたと考えられます。
宝石珊瑚は、ヤギ目に属するある種の深海産八放サンゴの骨軸を磨きあげたものです。同じヤギ目であってもイソバナ科などのように乾燥すると枝がもろく砕けやすいものは利用できません。
現在知られている宝石サンゴは次のような種類のものです。
・アカサンゴ(Corallium japonicum)
・シロサンゴ(C. konojoi)
・モモイロサンゴ(C. elatius)
・イボモモイロサンゴ(C. uchidai)
・ゴトウモモイロサンゴ(C. gotoense)
・ベニサンゴ(C. rubrum)
・アカボケサンゴ
・シンカイサンゴ(C.spp)
なお、近年では、ハワイ沖などで採取されるツノサンゴ目のウミカラマツ属の一部を黒サンゴと呼んで利用することもあります。
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人と珊瑚の出会い
モモイロサンゴの原木
古代人は、「珊瑚は、海の中では柔らかく海藻のようにゆらゆらとゆれて、海岸にたどり着くと空気に触れ少し前まで植物だったものが石になる・・・」と信じ、珊瑚への不思議な魔力を感じていたようです。
ギリシャ神話のゴルゴーン(メドゥーサ)の顔を見たものは石になってしまうという話と、どこか共通する部分があります。
人と珊瑚との出会いは古く、スイスのローザンヌ近郊にある約3万年前の遺跡から「お守り」と思えるいくつかの珊瑚が発見されています。
もっとも、珊瑚が業として始まったのは今から約2000年前の地中海沿岸からとされています。
日本人と珊瑚の出会いは、珊瑚が七宝の一つであることから、欽明天皇7年(538)、仏教伝来の頃からであろうと言われています。
奈良の正倉院には、天平勝宝4年(752)4月9日、聖武天皇が東大寺の大仏開眼会に着用したとされる礼冠垂飾の珊瑚玉と由来不明の珊瑚原木(25cmほどの枝状)があり、現存する日本最古の珊瑚とされています。
正倉院紀要 第24号(2002年:平成14年)
正倉院珊瑚調査報告書(鈴木克美)(pdf)
また、「イボモモイロサンゴ」と「ゴトウモモイロサンゴ」は、2012年に新種として学名が付与されました。珊瑚業界で「深海サンゴ」と呼ばれるサンゴや「ミッドウェーサンゴ」には、まだ正式な学名がありません。
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